目次

(1)川崎医科大学附属病院卒後臨床研修プログラムの特色

(ⅰ)病院長挨拶

川崎医科大学附属病院卒後臨床研修プログラム2025年度版を手に取っておられる研修医の皆様、研修初年度を迎えて決意も新たにされていることと思います。医学生時代とは全く異なる世界を経験できることに、武者震いされていることでしょう。

皆さんは、明確な目標を定めていると思います。その目標は達成するたびに、つまりゴールした途端に、新しい目標が現れます。常に高い目標を意識しながら、今の新鮮な気持ちを持ち続けて研修を続けてください。そうすることで皆さんは優れた知識や技術を身につけた良医になることが出来ます。

研修を通じて、感染症対策はもちろんのこと、災害、サイバーテロ攻撃などの危機管理に関してもリスク感性を高めるよう努力してください。そして、医療安全に関する事項は特定機能病院として最重要項目であり、常に安全文化を高める努力をしてください。

川崎医科大学附属病院は昭和48(1973)年に開院し、第1期生からこの研修システムを導入し、これが2004年から始まった全国の初期研修医制度の先駆けとなっています。皆さんも医学の道を選んだ事に誇りを持って、これからも高い徳性を身につけながら、世のために尽くすということを忘れないように日々精進してください。附属病院の理念である「医療は患者のためにある」ということを今一度認識し、「すべての患者に対する深い人間愛」を持って研修に臨んでください。

皆さんが充実した研修ができるように、当院は全力で応援します。 末筆ながら、皆さんのご活躍と益々のご健勝をお祈りいたします。

2025年4月1日 川崎医科大学附属病院 病院長 永井 敦

(ⅱ)川崎医科大学附属病院における医師卒後臨床研修制度の沿革と現状,将来展望

沿革と現状

川崎医科大学は,「全人的医療のできる人間性豊かな良医」を育成することを理念として1970年に設立された。附属病院は1973年に開院され,川崎医科大学の学生は第1期生から附属病院で実習に励み,卒後は多くが附属病院で研修を行った。これまでに4,000名を超す若き臨床医が巣立ち,全国の様々な医療現場において中核を担う存在として活躍している。

当院における卒後臨床研修の特長は,開院以来行われてきたプライマリ・ケア,救急医療研修の必修化とローテート方式の導入である。2004年から厚生労働省の主導により開始された新卒後臨床研修制度の理念と骨格は,すでに当院が約50年前から採用してきたものであり,この実績が本院における医師育成の取り組みの先見性と正統性を実証するものである。

ここで改めて当院の研修制度の特長をまとめると以下のようになる。

(1)プライマリ・ケア,救急医療教育が充実している。

全人的医療を可能にするプライマリ・ケア,救急医療の修得が新研修制度の重点のひとつである。本院の救急科・高度救命救急センターは大学病院として全国で初めて創設されたものであり,救急車の受け入れ約3,800件/年,ドクターヘリ約380件/年をはじめとする,1次から3次にわたる広範な救急疾患を扱っており,経験豊かな指導医のもとで高度な救急医療の現場を短期間に経験することができる。2006年には脳卒中急性期医療を専門とする脳卒中科も全国で初めて創設され,脳神経外科とともにstroke unitを構築し高度な脳卒中診療を展開している。さらに、2022年度からは臨床感染症科が新たに設置され、新型コロナウィルス感染症を含めた感染症に対する教育体制も強化される。 また,これも本学が全国に先駆けて創設した総合診療科では,common diseaseを中心としたプライマリ・ケアの実際を研修することが可能であり,一般外来研修が必須となる研修医にとっては豊富な臨床経験を積むことができる。